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浅見鉄男先生の井穴刺絡学

先日、井穴刺絡(セイケツシラク)という方法でかれこれ30年くらい治療している浅見鉄男先生の「井穴刺絡学」という本を友人から貸してもらったので井穴刺絡研究会で分けていただいたビデオと併せて興味深く拝読してみました。

井穴刺絡という方法は指先にある井穴というツボを太めの鍼で刺して血を微量に出す古くから東洋医学にあるやり方です。

 浅見先生はこの方法だけを用いて多くの病気に効果を驚くばかりの上げています。
特筆すべきは手足の4指の刺絡が副交感神経抑制の効果があることを発見したことです。ある時偶然に患者の肩こりに対して手の4指の刺絡を行ったところ、同時にその患者さんの蕁麻疹の症状が良くなってしまった、ということが最初のヒントになったそうです。

 実は副交感神経が過剰に働きすぎて起こっている症状は意外とたくさんあります。
例えば、喘息、片頭痛、アレルギー鼻炎、アトピー性皮膚炎、リュウマチ、12指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、低血圧、意欲の低下、疲弊感、鬱病、疲れが取れない、等々です。

一般に気功でもヨガでも鍼灸でもそうですが、現代人は緊張が多く交感神経優位の状態が多いので副交感優位のリラックスした状態にもって行こうという事が多く行われています。

 副交感神経優位のリラックスした状態を作り出すことは大変大切なことですから、それはそれで間違いではないのです。しかし、場合によっては、また病気によっては副交感神経優位状態に持って行くと良くない,
というか症状が治りにくい場合も実際には多くあるのです。

 先にあげた副交感神経が過剰に働きすぎて起こっている症状の場合には過剰に働いている副交感神経を抑制して交感神経機能を高めてあげる事が必要になるのです。具体的には副腎機能を高めてあげる必要(中医学的には補陽という事)ですがこれは治療師の経験と技術が要求されるので、単に痛みを取る治療と違って割と難しい場合があります。

 ウチの治療院(戸塚鍼灸院)でも頑固な喘息や片頭痛の患者さんが座位の姿勢で治療する事でガラッと改善したことがあります。これは筑波医療技術短期大学の西條先生の自律神経の研究で座位では交感神経優位の状態を作りやすいという研究によります。

 
 浅見先生によると副交感神経過緊張の状態はかなり多く見られ、全体の半分くらいの患者さんは手足の4指の刺激、つまり副交感神経を抑えて交感神経をたかめる治療で良くなっているそうです。

 一方最近ブームの安保・福田理論による自律神経免疫療法というものがあります。この安保・福田両先生も井穴刺絡を浅見先生に習ったのですが、いつのまにか交感神経刺激になる薬指4指は普通は刺激しないという理論に置き換わっています。

 この辺りがやや不可解というか解せない面があるので困りますが・・・・
どうやら、アトピー皮膚炎の治療を巡っての意見の食い違いから始まったようです。
 浅見理論ではアトピーは副交感の症状なので手足の4指刺絡で副交感神経を抑制し交感神経を高める訳です。
初期のアトピーはそれで良くなるそうですが、ステロイドを長年使った患者さんはステロイド皮膚炎という病態に変化しているため、他の指の刺絡をした方が良い、という事が分かってきて、それがいつの間にか第4指はいじらなくて良い、という風に(安保・福田理論では)なってきたようです。

また、安保・福田理論では免疫にのみ焦点を当てているために、交感神経刺激になるものは一切好くないというように解釈しているようです。
その割に第4指の井穴刺絡をすると果たして本当にリンパ球が減少するのか、という点に関してはきちんとデーターを示していません。
このあたり、あまりに図式的すぎるなあ、という印象です。

 浅見理論(というか実践から導き出された貴重な資料ですが)では第4指の適応になっている喘息、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、リューマチ、一部のメニュエル病などは、安保・福田先生達の爪もみ療法では他の指を刺激するようになっています。
 このあたりが誤解を招きやすくて、困った事だな~、という印象です。

 副交感神経優位に持って行くこと自体は大変重要な事なのですが、副交感神経抑制(交感神経刺激)が全部悪いような、害があるような印象を一般の人に与えるのは、私の臨床経験からも少し偏っているのでは無いかという印象がしていました。

ただ、過剰に働いている副交感神経機能を抑制するということと、交感神経機能を高める、という事は必ずしもイコールではない、という事に注意するべきでしょう。
現象としては同じであっても、問題は副交感神経機能の過剰なのか、それとも交感神経機能が低下しているために見かけ上副交感神経過剰の現象が現れているのか???

長く交感神経緊張状態が続くと、交感神経緊張状態が疲弊して低下したときに、逆の副交感神経の亢進状態が現れることがあります。
こういう場合は、過剰な副交感神経を抑制し、疲れ果てた交感神経を高めてあげる必要が有ると思います。

この辺は微妙に難しいところで今後の課題ともいえます。

 浅見先生の貴重な臨床報告を拝見して、安保・福田理論に何となく感じていた疑問点がだいぶ氷解したばかりでなく、大きなヒントを与えていただけたと感謝m(_ _)mであります。

追記 最近は安保福田理論に基づいて自律神経免疫療法を行っている先生方も
薬指も一緒に刺激した方が良い、という様に変わってきたそうです。

横浜市戸塚鍼灸院

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コメント

あんご針灸院様、コメントありがとうございました。
お返事が遅くなって失礼しました。
先生のブログも充実していますね、
参考になりました。

 私のブログタイトル「現代医学的鍼灸治療」の「指端刺絡の作用」記事中、このブログの内容の一部を引用させていただきました。
 ありがとうございました。

>石原さん
40年来のアトピーですと残念ですが一筋縄ではいきませんね。
安保先生方式でも簡単では無いと思います。
自律神経としてとらえるなら、交感神経、副交感神経を交互に揺さぶってあげて、徐々に落ち着かせていくというような方法にならざるを得ないと思います。

はじめまして、私現在56才です。40来のアトピーで困っています。あるところから浅見先生の方法がよいと教えてもらって両手両足の薬指の外側を注射器で刺して30滴ほど血をだしたのですが、4,5日たってから症状が非常に悪化しました。安保先生のほうが正しかったのでしょうか?どうしたらよいか教えてもらえないでしょうか?

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