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非細菌性慢性前立腺炎・慢性骨盤痛症候群の鍼灸治療解説

 長時間坐位で仕事をする人、自転車に乗る機会の多い人、スポーツクラブで長くバイク・エクササイズを行う人等は骨盤底筋群や太ももの後側の筋肉を傷めてそれがトリガーポイント(ひきがね点)となり、会陰部痛や尾骨痛、下腹部痛、排尿障害、坐骨神経痛の様な症状を引き起こすことがあります。
これらは慢性骨盤痛症候群とか慢性非細菌性前立腺炎と呼ばれています。

1999年のアメリカの国立衛生研究所(NIH)が提唱した前立腺炎の新分類では、
カテゴリーⅢ型の慢性非細菌性前立腺炎 の中で
非炎症性のものをⅢBとして 慢性骨盤痛症候群としています。

まあ・・・いかにも、ゴミ箱的名称(バスケットネーム)の症状名です・・・・。
悪性の原因となる病気や、感染症がないにもかかわらず、原因不明の骨盤部の痛みの総称、ということです。

また、近年スタンフォード大学泌尿器科の研究では、
この慢性骨盤痛症候群と呼ばれている疾患は、前立腺の病気というよりは、骨盤底筋群の慢性的な過緊張・トリガーポイントが原因であるということが.言われ始めてきました。

骨盤内静脈うっ滞症候群 という名称もありますがほぼ似たような状態ですが、骨盤底筋のトリガーポイントからの関連痛の問題が強いのか、或いは骨盤内静脈の欝滞から引き起こされる症状が強いのか、微妙に個人差があるように思います。

そしてトリガーポイントをほぐす理学療法と逆説的骨盤筋リラックストレーニングの組み合わせによる治療法が提唱されています。

結論としてこれらの治療法は、痛み・排尿症状の軽減において従来の治療より有効で、慢性前立腺炎・慢性骨盤疼痛症候群の有効な治療法である、と報告されているそうです。

 だいぶ以前からトリガーポイントの研究家たちは原因不明の会陰部痛、骨盤痛の原因が、骨盤底筋群のトリガーポイントに有ることに気がついて指摘していたのですが、やはり泌尿器科という狭い視点で病気を診ていると、今までは中々この事が理解できなかったのでしょうね。
(もちろん中には本当に前立腺の問題から痛みや排尿障害が起きているケースも有りますが)

いわゆる骨盤底筋群としては球海綿体筋、坐骨海綿体筋 会陰横筋、外肛門括約筋、肛門挙筋、尾骨筋,内閉鎖筋などが属しています。

骨盤底筋の過緊張・トリガーポイントから起こる症状は実に多彩です。

代表的なのは会陰部痛(特に座っていられない)、尾骨痛、仙骨痛、下腹部痛、腰痛、そけい部痛,残便感,直腸膨満感、坐骨神経痛様の下肢痛、排尿障害、
また女性だと性交時痛、不感症、外陰部痛,過活動膀胱、間質性膀胱炎の一部なども考えられます。

 会陰部痛があるからといって、必ずしも痛む場所が原因となっているトリガーポイントということではありません。
会陰部痛は関連痛という、結果(痛み)の現れている場所です。
原因となっている問題は別の所にある場合が多いです。

代表的な症状である会陰部痛などを関連痛として引き起こす可能性のある筋肉としては

大内転筋

恥骨筋

大殿筋

梨状筋

等があります。

 鍼灸のアプローチだと、伝統的鍼灸の臓腑経絡学説では腎経、膀胱経、肝経が治療の中心になります。
ただ、頑固なトリガーポイントによる関連痛及び骨盤内静脈鬱帯が原因になっている場合は、末端のツボ等を用いても、そのトリガーポイントなどを上手に処置しないと治すのは難しい感じです。

 原因となっている坐骨結節の周辺のトリガーポイントをねらい、結果的には陰部神経周辺の鬱帯(骨盤内静脈うっ滞症候群)を改善することになります。

治療の際、お尻は少し出してもらいますがデリケートゾーンを丸見えにするほどでは無いので、他の治療法よりは恥ずかしくないと思います。
このあたり鍼灸のアプローチは患者さんの為にも非常に優れている物だと思います。

付記・追記
一般に、慢性前立腺炎は難治性で、症状が多彩、個人差も大変多く、長期間患っていてノイローゼ気味の方も多くいらっしゃいます。印象としてはクラミジアなどの性病感染から慢性前立腺炎に移行して何年も経過している症例は複雑に色んな要素が絡み合ってますから、改善はしますが、やはり簡単ではなく、かなり時間がかかる感じです。
ただ、当院の症例に出しているように、骨盤底筋の鍼灸治療で比較的短い時間で順調に改善するケースが有るのも事実です。

この疾患の治療経験が増えてきましたが、慢性前立腺炎と呼ばれている病態にはおおざっぱに分けると以下の3つだと思います。

1.骨盤底筋や骨盤周囲の筋肉のの過緊張がトリガーポイントとなり関連痛を引き起こしているもの。
更に骨盤周囲の筋肉や骨盤底筋の緊張が骨盤内静脈うっ滞を引き起こして、陰部神経などを介して前立腺炎もどきの症状を顕しているもの。

2.実際に前立腺に腫れ・圧痛があり偽炎症の様な症状を呈しているもの。
あるいは過去に精索静脈瘤や精巣腫瘍クラミジアなどの実際の泌尿器疾患の既往症があるもの、急性細菌性前立腺炎から慢性に移行したもの。

3.以上2つが混合しているもの。

現在日本で行われている公式な鍼灸治療の研究では筑波大方式、明治国際医療大学(旧明治鍼灸大学)方式があります。

筑波大学方式
・臀部 膀胱兪と会陽、背部 三焦兪と志室のパルス(低周波治療)
・腹部 天枢と横骨、 中極と曲骨のパルス
・骨盤底筋パルス、内閉鎖筋パルス 陰部神経パルス  
 (考え方としては骨盤内静脈うっ滞症候群を念頭に置いていると思います)

明治国際医療大学(旧明治鍼灸大学)方式 
(神経刺激→中枢抑制に重点を置いているようです。)
・仙骨部の「中りょう」 というツボへの10分間の旋捻術(強刺激)
・陰部神経パルス

当院では以上の方式を考慮に入れながら、当院独自の方法も加味して治療を行う考えです。

最近、女性の間質性膀胱炎を明治国際医療大学方式の仙骨部「中りょう」への針灸術で治療する機会があり、かなり効果的なので、慢性前立腺炎で実際に前立腺に問題がある人ような上記の2や3のタイプには、こちらの方式も用いるのも良いよう思います。

ただし、「中りょう」 というツボへの10分間の旋捻術(強刺激)は欠点として
・太い鍼での強刺激のため痛い事
・治療後の数日間は一時的な反応で症状が強く出て、その後軽快していく、
 といういわゆる瞑眩のような反応が出ることが多い。
 特に最初の5~6回位は症状が悪化したように感じるときもある。

骨盤底筋の緊張を弛めて骨盤内のうっ滞を改善する方法と、神経刺激を行う方のとの、治療の兼ね合いみたいな部分が個人差があってさじ加減が難しいのかな、という印象を持っています。

横浜市戸塚鍼灸院

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コメント

コメントありがとうございました。
特に問題はないです。

はじめまして。
ぼーっとしながら、ここにたどり着きました。
私は、昨年7月終わり頃から、性器(最初エイン、膣)にこそばゆい違和感を覚え、日を追って性器の痛みが出てきました。産婦人科、泌尿器、何件かいきました。
異常なし。しかし激痛に毎日苦しんでいました。
最後に愛知の大きな大学病院で入院。付けられた病名「骨盤低筋群症」そして、痛み止め(内服、坐薬)筋肉を和らげる薬、etc・・・
今では、肛門の辺りの痛み、でん部の痛みが出ています。
この記事を読んで、もしかしたらこれ?
そう思いました。

来週、診察があります。
この記事をドクターにお見せしたいと思います。

もし、問題あれば、お手数ですが、メールいただけますでしょうか?

ありがとうございました。

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