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耳たぶ按摩入門 (耳鍼について)

はじめに

 中国に古くから伝わる自己按摩法のなかに耳ツボを用いた耳の按摩法(耳功)があり、様々な流派の気功法の中でも取り入れられています。例えば北載河気功康復院で編集された保健功には、6種類の耳功が入っていますし、張広徳先生の導引養生功や馬礼堂先生の養気功にも、耳の按摩法が紹介されています

 耳ツボのの按摩法(耳功)は耳の病気だけではなく多くの病気に効果がある素晴らしい方法です。私自身も、本業のハリ治療の中で、耳針法を取り入れ、大きな成果を上げています。耳針法は従来の体針(主に体にさすハリ)に比べ坐骨神経痛、腰痛、膝痛、頚、肩の痛み等の疾患に大変著しい効果があります。又、現代病となっている各種のアレルギー疾患(アレルギー性鼻炎、喘息、ジンマシン、アレルギー性の皮膚炎や、ストレスによる神経症、円形脱毛症、不眠、ダイエット、禁煙、にきび、等にも大変効果的な方法なのです。今回は気功愛好家の為の耳たぶ按摩人門ということでお話しましょう。

耳針法の沿革

 中国の方では、古くから耳を用いた様々な診断や治療が行われていました。二千年以上前の黄帝内経という本の中では、「耳の好悪を見て腎臓を診察する」「耳の中に青筋が出来ている人は痛みを持っている」「引きつけを起こして人事不省に陥る者には管を以て両耳を吹け」とか記されており、当時から耳が診断や治療に用いられていた事が解ります。

 一方、西洋の方でも医聖ヒポクラテスが、当時、耳を便って病気を治療していたそうです。その後は、耳による治療は一時廃れていた様ですが、7世紀以降には、ポルトガル、イタリア、スペイン、フランスといった地方で歯の痛みの治療とか腰痛等の治療が耳を使って行われていました。その頃は特に耳の一部を焼きゴテみたいな物で焼灼するという治療がよく行われていたようです。16世紀のボッシュという画家の描いた「悦楽の園」という絵には、耳にハリを刺している絵が描かれています。

Bossu
ボッシュの悦楽の園

 この様に古くから西洋、東洋で耳を使った治療は民間療法のレベルで細々と行われていました。現在の様に、耳のツボが整理されてきたのは、1950年以降の事です。先駆者として最も知られているのがP.ノジェです。

耳針法の先駆者ポール・ノジェ

 ポール・ノジェという人は、フランスの医者で、「耳には胎児の形で人体が投影している」と言う事を、発見した人です。1951年に偶然の事からノジェは耳に注目する様になりました。ノジェの診療所を訪れる患者さんの中の何人かが、耳の一部に焼灼の痕をもっていました。ノジェがその事を質問すると、「腰痛で苦しんでいて、リヨンの先の方で耳を焼いてもらったら腰痛はスッカリ良くなった!」と言う返事でした。
 調べてみるとリヨンの先の方で、マダム・バランという人が父親から受け継いで耳の一部分を焼灼する治療を行っていました。ノジェはこの療法に興味を持ちました。患者が皆同じ箇所に焼灼の痕を持っていた事から、全ての痛みにこのポイントが効果があるのではないかと考えました。ノジェが色々試してみるとこのポイントは肩の痛みとか、頚の痛みとかの他の痛みに対しては、効果がありませんでした。又、このポイント以外に腰痛、坐骨神経痛に効くポイントはありませんでした。ある時、ノジェの友人で整体をやっている人が、腰痛(坐骨神経痛)は第5腰椎の問題だと指摘してくれました。ノジェは、耳のこのポイントが人間の第5腰椎に当たるのではないかと考えました。そして背骨全部が耳に各々ポイントを持っているのではないかと仮説を立て研究を始めていきました。

 例えば、手首が痛い時に、耳の何処に反応が現れるのかと言った事を丹念に時間を掛けて調べていきました。そして1956年に「耳には胎児が逆さまの形で人体の各器官が投影されている」と言う事を発表しました。これ以降、フランスでは、耳の反射療法の事を耳介療法一オリキュロセラピー)と呼んでいます。

Nojye

ラファエルノジェ氏と著者

 一方、中国の方でも複雑になった鍼灸をもっとシンプルにしょうという動きが出ていました。そして、ノジェの研究に触発され上海の方で、耳針療法を行うグループが出てきました。中国で耳針療法としてまとまった形で整理されたのは仏のノジェより少し遅れて、大体1958年頃の事です。

Sakasita
世界初の耳鍼のよる  抜歯麻酔に成功された  坂下孝則先生と

耳は人体の勾玉(まがたま)

 耳の形は胎児が逆さまになった形をしています。この形で連想されるのが、古代の呪術で用いられた勾玉です。胎児の形である勾玉には、エネルギーが大変凝縮した形で集まっていると考えられます。図形研究家の福原肇氏は、勾玉の形は、〈魔を払う最強の形〉であり、〈創造主の最高の造形〉、〈高度な命の形〉であると解説しています。古代に勾玉がどういう使われ方がされていたのか詳細は不明ですが、この形に何らかのパワーが有ることは間違いないでしょう。

 昔は戦死者の耳をそいで埋める風習があって、それを埋める耳塚という物があったそうです。長野県南安曇野郡には、次のような耳塚伝説が残っています。「昔、坂上田村麻呂が有明山に棲んでいた八面大王を、矢で射殺した。田村麻呂は、退治した妖魔八面大王の耳を切り落として埋めた。」それがこの地方の耳塚の起こりだそうです。

 神道学者・鎌田東二氏は、「田村麻呂はなぜ八面大王の耳だけをそぎ落として埋めたのだろうか。云うまでもなく、耳が八面大王の霊性および霊力を象徴する器官であったからだ。耳を身体より切り離すことによって、八面大王は完全にその霊力を失うと考えたのだ。」と解説しています。「耳のコスモロジー」より)

 耳が単なる集音器であるならば、耳が胎児の形である必要はないでしょう。人体の中でも、耳は特殊なエネルギーと関連すると考えられます。いわば耳は人体の勾玉なのです。人相学では耳は聡明性を現すところです。釈迦像や観音像等の仏像は、例外なく豊かな耳(福耳)をもっています。 東洋医学では耳は「腎」と密接な関係があると考えられています。「腎」は「先天の気」が宿るところとされています。それは両親から受け継いだ先天的なエネルギーが胎児の時に「腎」に蓄えられるということを意味しています。

とりあえずここでは、
「耳-胎児の形-勾玉-霊力、霊性、聡明性
-先天の気、 生命力-腎」という関連性に注目しておきましょう。

器官というだけではなく、内臓や経絡と密接な関係を持つ大変重要な器官として捉えています。経絡というのは、東洋医学独特のエネルギールートで、五臓六腑と深い関係を持ち、これらを調整する働きを持っています。黄帝内経という古い文献には、「耳は宗脈の集まる所」と記されています。宗脈というのは総脈の意味で、「耳は多くの経絡の集まる重要な所」という意味です。ですから耳を刺激することは、全身に大きな影響を与え、耳鳴り、難聴だけでなく多くの病気に効果があるのです。

 五臓はそれぞれ独特の関連性を持っています(肝-目、心-舌、脾-唇、肺-鼻、腎-耳)。内臓では耳は「腎」と深い関係をもっています。中医学でいう「腎」というのは、単なる尿を作る腎臓だけではなく、副腎や生殖機能、視床下部、内分泌系を含んだ広い意味を持っています。腎は「先天の気」の宿る所とされ、私達が父母から受け継いだ遺伝子情報もこれに含まれています。簡単に云えば、生まれながらの生命力とも言えるでしょう。

 「腎」は多くの働きを持っています。人間の成長・発育・生殖能力を支配しているのは、「腎」です。中医学の考えでは、骨髄、脊髄、脳髄は「腎」から生じたものであり、「腎」が司るものとされています。又、骨の中の髄は、「腎」が生み出すものとされていますから、骨髄、脊髄、脳髄は、皆、「腎」に属すものとなります。歯も骨の余りですから、「腎」の支配になります。「歯が弱い」とか「骨が弱い」とかは、「腎」の弱さと関係があります。
 脳・脊髄という、人体の中枢神経の大元も腎と深く関わっています。ですから、ボケ等も「腎」の衰えと考えます。又、髪は「血余」と言われますが、その生成の元は、「腎」にあります。老人になると「腎」が衰えてきまずから、髪にツヤが無く、白髪になり、抜けていき、生殖能力も低下していわゆる「腎虚」の状態になってきます。

以上述べたように「腎」は東洋医学においては、大変重要な概念です。耳たぶ按摩は耳-腎-脳の相関を利用して、「腎」(生命力-根気の力)を強化する手軽な健康法といえます。

(旧HPより移転)

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